同期の姫は、あなどれない
 いつもドキリとさせられ慌てさせられるのは私の方だった。
 だから、呆気に取られたような表情が新鮮なのと、やっとこっちを見てくれた喜びで恥ずかしさもどこかへ飛んでしまった私は、少しだけ饒舌になっていた。

 透子さんを羨ましいと言ったのは、自分が元カレとダメになったときだったから、二人の関係が羨ましいという意味だったこと。

 悟さんと話すのは楽しかったけれど、それ以上の感情はないこと。

 姫の前で笑えなかったのは楽しくないからじゃなくて、いつもと違う雰囲気の姫にドキドキしていたこと。

 もしかして彼女と来たことあるのかなってモヤモヤしていたこと。


 「私が好きなのは、姫だよ」


 とうとう言ってしまった。
 もう引き返せないし取り消せない。

 姫は、急に脱力したように大きく溜息を吐く。
 それから前髪をぐしゃりとするとあぁ、もう、、と小さく呟く声が聞こえた。

 「透子さんに彼女に間違われたとき、嫌そうに思いっきり否定してたのは?」

 「い、嫌そうって?私はしてないよ、嫌だったのは姫の方じゃないの?」

 私が姫のことが好きかもしれないと気づきかけたときだ。不機嫌そうだった姫の目を今でも覚えている。

 「……あぁ、あれはそうじゃなくて、、」

 「そうじゃなくて?」


 「兄貴に気づかれたと思ったから。
 俺が、早瀬のことが好きだって」


 そう言って口元を覆う姫の顔は、
 夜の闇の中でもはっきり分かるほど赤い。

 こんな表情初めて見た。


 「好きだよ、ずっと。いつからかなんて分からないほど」


 
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