同期の姫は、あなどれない
 それからお風呂をどっちが先に入るかで軽く押し問答をした末に、先に使わせてもらった。

 パジャマ代わりに借りたTシャツは、もともとロングTシャツであることを差し引いてもかなり大きくて、こんなに違うのかと実感すると胸の奥がくすぐったくなった。

 「…あ、まだ乾かしてた?」

 リビングでドライヤーを借りていたら、乾かし終わる前に交代でお風呂に入っていた姫が出てきた。

 「うん、もう少し。ごめん遅くて」

 雫が滴り落ちるほどではないものの、まだ少し生乾きな部分が残っている。特別手入れに力を入れているわけではないけれど、少し気になった。

 「後ろの方?貸して」

 私からドライヤーを受け取った姫の手が髪を撫でて、熱風が当たる。
 美容院でも毎回思うけれど、人にやってもらうのって何でこんなに気持ちいいんだろう。油断するとウトウトしてしまいそうになる。

 「ありがとう、やってもらっちゃって」

 「いや、これ安いやつだから風量弱いんだよな。今度もう少し良いやつ買うか」

 「え?」

 「これからちょくちょく使うだろ?」

 それってつまり、これからもここに来てもいいということだろうか。
 至極当然のことのように言われて、それだけで心が動く。胸が騒がしくなる。頬が熱いのはドライヤーの熱だけではない。

 しばらく沈黙が続いて、部屋の中はドライヤーの音だけ。普段はちょっと煩く感じるその音も、早鐘のような心臓の音をかき消してくれるようでちょうどよかった。

 「これくらいでいい?」

 カチッとスイッチを止める音がして、髪に手を伸ばすとすっかり乾いている。

 「綺麗に乾いてる、ありがとう」

 どういたしまして、と姫が言うと、今度は自分の髪をぐしゃぐしゃにして水分を飛ばしながら乾かし始めた。

 「……けっこう、豪快なんだね」

 意外な一面を見た気がしてまじまじと見ていると、私の視線を目の端で捉えた姫が、これが一番早いんだよと少し気恥ずかしげにそっぽを向いた。
 それがおかしくて、私は気づかれないように小さく笑った。

 
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