【2/16 番外編追加】同期の姫は、あなどれない
「ごめんね、ありがとう」

「いや、俺のもちょうど空だったし。前から思ってたけど、早瀬って昔こういうとこでバイトしてた?」

巽くんの言葉に、私は単純に驚く。今まであまり気づかれることがなかったから。私がそうだよと言うと、やっぱりなーと巽くんは納得したように何度か頷いた。

「俺も居酒屋でバイトしてたからさ。なんかいろいろ気がつくところとか動きがそれっぽいなって」

「あ、そうだったんだ?巽くんもホール?」

「いや、俺はドリンカー」

ドリンカーはその名の通り、裏で注文されたドリンクを作る人のこと。カクテルメニューが多いと一つ一つ分量を覚えるのも大変だし、ピーク時には注文が一気に殺到したりと、なかなかハードなポジションだ。

「こういう週末のピークタイムとか、ホールからの圧がすごいんだよなぁ。こっちは1人だから捌ける数に限度あるし」

「懐かしいね、バイト時代」

「ほんとそれな。それが今や客側で来てるんだもん、歳取ったわ」

そう言ってからからと笑うので、つられて笑ってしまう。

届いた新しい飲み物を飲みつつ喋っていると、ふと、巽くんは何かに気づいたように遠くを見た。

「今日さ、姫元来てるんだな?俺も毎回同期会に出てるわけじゃないけど、すげえ久しぶりに見た気がする」

「あー……うん。そうみたい」

壁際の私たちから遠いその席を私はわざと見ずに、そうだねと当たり障りのない返しをしていると、こちらを見る視線を感じる。

「……何?」

「早瀬ってさ、姫元のこと好きなの?」
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