同期の姫は、あなどれない
 「来月の連休なんだけど、賢吾は何か予定ある?」

 「5月の連休?」

 「うん、ゴールデンウィーク。実はそっちに会いに行こうかなって思ってるんだけど」

 すると、さっきまでの会話の勢いから一転、「うーん」とか「どうかな、、」と明らかにトーンダウンする。
 何というか、歯切れが悪い。

 「どうしたの?もしかして仕事になりそうとか?」

 「うーん、まだわかんねぇけど、、っていうかさ、俺この間から仕事忙しいって言ってんのにゴールデンウィークの話とかする?」

 「え?」

 「いいよな、ゆきのはお気楽で」

 (それってどういう意味?)

 まさか、そんな返答をされると思っていなかった私は面食らってしまった。

 「何その言い方。連休に遠距離の彼氏に会いに行きたいって提案するのは、そんなにおかしなこと?」

 自分だって今からゴルフへ行く話をしていたのに、私が休みの予定を提案するのはダメなの?

 通常の週末は、突発的な休日出勤の可能性があるからという理由でNG。
 3月の3連休はお互いの予定が合わずじまい。
 結局会えたのは、1月下旬の引っ越した直後に福岡に行った時だけだ。

 「それは会いに来てほしくないってこと?」

 「そこまでは言ってないだろ。ただ、仕事の心配をしなくていいなんて羨ましいなって意味でさ」

 「そんなふうには聞こえなかったけど」

 「なら、ごめん。俺だってゆきのに会いたいって思ってるよ。もう少し連休近くになって、予定がはっきりしたらいろいろ決めよう?な?」

 普段は聞き役に徹することが多い私が言い返したせいか、珍しく賢吾がしどろもどろになっている。

 「でも連休はもう来月だよ?きっと混むだろうから飛行機のチケットだって早めに取りたいし」

 「混むっていったって1人分ぐらい何とかなるだろ?泊まるところだって俺の部屋なんだから心配しなくていいしさ」

 さっきまであんなに同じ職場の人を『見通しが甘い』とか『報連相ができてない』なんてグチっていたのに、私との予定はそんな曖昧な決め方なんだとがっかりする。

 何も決まっていないし、ただ先送りにされただけのようにしか思えず、納得がいかない。
 けれど、今これ以上言ってもお互い険悪になるだけのような気がする。

 「あ、そろそろ出かける準備しねえと。じゃあな、また連絡するからさ!」

 「うん、、気をつけてね」

 通話終了ボタンを押して、私はふう、とため息をつく。
 遠距離になってから、賢吾とはどこか嚙み合っていないような、すれ違っているような気がする。遠距離になることが決まった時は、寂しくて落ち込む私を明るく励ましてくれていたのにな。

 『大丈夫だって!毎日連絡するし、遠距離って言っても海外じゃないし、会おうと思えば会いに行ける距離じゃん』

 そう言っていたのは賢吾だったのにな。

 ベランダから見える空は雲一つない快晴なのに、私の心は晴れない。

 (せっかくの週末なのに、ウジウジしていてももったいない。私も出かけよう)

 遠距離になったから変わったと思いたくない。
 今は少し忙しくて、余裕がないだけ。

 私たちは大丈夫。そう、思いたかった。

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