同期の姫は、あなどれない
 「ちょっと倫花ちゃん、呼ばなくていいから!」

 「先輩、ここは一般男性側の意見も聞いてみましょうよ!」

 「聞かなくていいから!」

 何だかややこしい展開になってきてしまった。

 どうしたものかと困っていると、タイミングよく同じ開発部の3年目の女の子2人がこちらを呼んでいるのが見えて、私は急いで倫花ちゃんの肩を叩いて知らせる。

 「ねえ、あそこで呼んでるの、倫花ちゃんの同期の子じゃない?」

 「どこですか?本当だ、何だろ?すいません、お先に失礼しますね~!」

 倫花ちゃんはトレイを手に取って立ち上がると、同期の子たちの方へと小走りで駆けて行った。

 (よかった……)

 まるで嵐が去ったような気分で、私は胸を撫で下ろす。

 「…で、一体何だったんだ?」

 姫の問いに、私はごまかすように曖昧に微笑む。
 いくら同期とはいえ、姫に彼氏とのいざこざを相談する気にはなれない。

 (というより、そんな話聞かされても興味ないだろうし、困るだけだよね)

 怪訝そうな表情のまま、姫は空になった食器を乗せたトレイを持って立っている。
 おそらく、カフェテリアから出ようとするところを呼び止められたんだろう。

 「えーっと、ごめん何でもないの、気にしないで?」

 私も席から立ち上がり、一緒にカフェテリアを出ることにした。


 エレベーターホールに着くと、姫は下の階行きのボタンを押したので、あれ?と疑問に思う。開発部があるフロアは9階だからだ。

 「下に行くの?」

 「ああ、コンビニ。早瀬は上?」

 「ううん、私もコンビニ行く。甘いもの買おうと思って」

 「好きだな、コンビニスイーツ」

 エレベーターのランプが鳴って、下の階行きのエレベーターがやってきた。

 中には誰も乗っていない。
 私は姫の後に続いて乗り込んで1階のボタンを押した。扉が閉まる。

 
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