同期の姫は、あなどれない
 今日は金曜日ということもあり、オフィスは定時帰宅をする人たちが多い。
 私も少し早めに仕事を切り上げて、18時を少し過ぎたところで退社した。

 とりあえず帰りにスーパーで買い物をして、何か作ろう。
 自宅の最寄り駅の駅ビルに入っているスーパーに寄ると、同じように仕事帰りのお客さんで賑わっている。

 (冷蔵庫に何があったっけ?玉ねぎとじゃがいもと、キュウリがあった気がする)

 精肉コーナーの前で、豚肉が安売りしているのが偶然目に入った。
 今日は久しぶりに生姜焼きにしよう。
 私は豚肩ロースの小さなパック、かさ増し用のもやし、明日の朝用の食パンを買ってレジを済ませ帰宅した。

 今日の献立は、かさ増し用のもやしと玉ねぎを加えて炒めた豚の生姜焼きと、残ったもやし半分とキュウリでナムル。それからインスタントのわかめスープだ。

 夕食を食べ終わり、時間を確認するともうすぐ20時半。
 私はスマートフォンを手に取って、賢吾にメッセージを送ってみる。

 『おつかれ、もう家に帰ってる?』

 少し経ってから返信を知らせる着信音が鳴った。

 『さっき帰ってきたとこ』

 もう家にいるんだ。
 私は思い切って、テレビ電話の通話ボタンを押した。数回のコールのあと画面が切り替わる。

 「もしもし、賢吾?」

 「ゆきの?悪い、ちょっと今部屋の片づけしてるからさ、普通の通話に切り替えるわ」

 早口でそれだけを言うと、私がいいよと言うより早く通話が切れた。
 そのまま5分ほど待っていると、賢吾から着信が入る。

 「悪いな、ちょっと荷物色々増えたから整理してんの」

 「そうだったんだ。あのね、連休もうすぐだけど仕事の予定は分かった?どの辺りならそっちに行っても大丈夫そう?」

 私は一度ふうっと息を吐いてから、意を決して聞いてみた。
 電話の向こうの声が途切れて、少しの間沈黙が流れる。

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