同期の姫は、あなどれない
 2時間の宴会は、ほぼ予定通りにお開きになった。

 お店を出ると営業の獅堂さんが二次会に行くメンバーを確認していた。私も声を掛けてもらったけれど、明日朝早くから出かける予定がある言って丁重に断った。

 嘘をついて断ったことを申し訳なく思いつつ、幹事代理も引き受けたのだしこれくらいは許されるだろうと開き直る。
 幸い自宅が遠方で一次会で帰宅するメンバーも何人かいたので、私も皆に挨拶をして二次会組を見送ったあと、駅へと向かった。

 今日は金曜日ということもあってか人出が多いように感じる。特に駅前のSL広場は、駅から出てくる人と駅構内へと向かう人、待ち合わせをする人で混み合っていた。

 (ここ、テレビでよく見る場所だ)

 ニュースの街頭インタビューなどでよく映るSL広場を、人にぶつからないよう気を付けながら横目で見る。

 私は東京生まれ東京育ちながら、新橋に来るのは初めてだった。
 サラリーマンの街というイメージで学生時代は縁がなかったし、社会人になってからも会社の飲み会はオフィスがある恵比寿周辺が多く、訪れる機会がなかったのだ。

 「早瀬さんは何線ですか?」

 隣りを歩くS製薬の加藤さんに尋ねられる。

 「山手線です。東京駅で中央線に乗り換えようかなと」

 「中央線沿線なんですね、それならもう1駅先の神田で乗り換えた方が移動が楽ですよ。週末の東京駅は出張帰りの人もいて、混み具合がすごいので」

 「そうなんですね、ありがとうございます。加藤さんも山手線ですか?」

 「僕は東海道線です。横浜のさらに先で、そこからバスなんですよ」

 一緒に駅まで歩いてきた数人の帰宅組もそれぞれの路線へと分かれていき、山手線のホームへと向かうのは私一人だった。

 
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