同期の姫は、あなどれない
 ちょうどタイミングよくプロジェクト用の携帯電話が鳴った。問い合わせの電話だろうか。
 とりあえず話を逸らすことができてホッとする。

 私も途中になっていた仕事に取り掛かろうと自分のPCに向き直ったとき、
 「早瀬先輩、大変です!」と珍しく慌てた声で倫花ちゃんが駆け寄ってきた。

 「システム部の脇田さんからなんですけど、工場への製造指示が止まっているそうです。あと仕入れ先からの発注も遅れてるみたいで」

 システムトラブルだ。

 私はすぐにメールを確認する。アラート検知のメールや電話は来ていない。本番システムが止まっているわけではなさそうだ。他に考えられる可能性としてはデータ容量逼迫かメモリ不足。それならもっと他にも影響が出ていそうな気がする。となると……バッチ処理の遅延?

 私は頭をフル回転させながら、影響範囲と考えられる可能性をリストアップしていく。

 「わかった。電話代わるから、倫花ちゃんは四宮(しのみや)課長とインフラの大野さんに状況を連絡してくれる?」

 「了解です!」

 私は自分のPCでシステムへアクセスしながら電話を受け取り、保留を解除する。

 「お待たせいたしました、お電話代わりました早瀬です。はい、今吉沢から聞きましてーーー」

 その1本の電話から、お昼休み明けののんびりしていた雰囲気は一気に吹き飛び、トラブル対応とリカバリーに追われ、午後の時間は目まぐるしく過ぎていった。

 
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