同期の姫は、あなどれない
 「早瀬、飲み物出すの頼める?グラスはさっきの棚の2段目、買ったやつは冷蔵庫に入ってる」

 「うん、分かった」

 私は棚から出したグラスを運んで、コーヒーテーブルの上に置く。
 ソファーでは食べづらそうなので、少しだけテーブルを前にずらしてラグの上に座れるスペースを空けた。それから冷蔵庫からコンビニで買ったお茶と、自分用の果実サワーをグラスに注ぐ。

 「あ、テーブル移動してくれた?サンキュ。はい、簡単なものだけど」

 私の目の前に湯気が立ち上ったどんぶりが置かれる。湯気に乗って食欲をそそるいい香りが漂ってきた。
 私たちはラグの上に座って、どちらからともなく「いただきます」と手を合わせた。箸でラーメンを持ち上げて一口すする。

 「本当だ、これ美味しい!」

 初めはどういう味なんだろうと恐る恐るだったけれど、トマトの酸味でさっぱり食べられる。この味すごく好きかもしれない。

 「今度うちでもやってみようかな」

 「あっさりしてて罪悪感が多少薄れるだろ」

 「うん、もしかしてこれカロリーゼロ?」

 「んなわけあるか」

 そんな軽口を言い合いながらしばらく食べ進めてから、サワーを入れたグラスに手を伸ばす。

 「姫はお茶でいいの?」

 「今日はいつもより飲んだしこれでいい」

 「そっか、でも全然顔に出ないよね?普段と変わらないっていうか」

 「よく言われる。まぁ強い方だとは思うけど軽い二日酔いにはなるけどな」

 自分だけお酒で申し訳ないなと思いながらも、サワーのグラスに口をつける。初めて買った銘柄だけど甘くて飲みやすい。一気に飲みすぎないように気をつけないと。

 それからふと会話が途切れたとき、そういえば、と姫の方から話を切り出した。

 
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