世界はそれを愛と呼ぶ

第6節 番

☪︎


「……相馬?」

目が覚めると、沙耶は何故か相馬の上に乗っていた。
心臓がバクバク鳴って、息が苦しくなり始めたあたりから、記憶が曖昧なまま。……何故こうなっているのか。

「ん……起きたのか」

この距離だからわかる、相馬の顔面の良さ。
先日、勇真兄たちに変な事を言われてから、何となくソワソワする沙耶は平静さを保つように頑張って。

「私、寝相悪かった?」

「ん?いや?」

「……重くない?」

「全然?」

大欠伸をしながら、手持ち無沙汰なのか、沙耶の後頭部を撫でる相馬。

「……下ろしていいよ?」

「まだ朝早いよ。もう少しだけ」

「え?」

見れば、まだ朝の4時。それはそうだと思いながら、相馬の上から降りようとすると、相馬の腕が自然と沙耶の腰を抱き締めた。

「わっ、そ、相馬?」

「……なぁ、沙耶」

「な、なあに?」

相馬は、さっきから何か考え込んでいる様子だった。
それを不思議に思いながら、続く言葉を待っていると。

「─結婚しようか」

と、サラッと。

「…………へ?」

「結婚」

「いや、聞こえなかったわけじゃなくて……婚約者として偽ってもらってるだけでも、かなり助かってるのに」

「ん〜……」

寝ぼけているのだろうか。
それはそれとして、大問題の発言だが。

「籍だけ、籍だけ入れれば、お前は俺の妻だ」

「……うん?」

「少しの間だけ、御園沙耶になってくれれば、物事がスムーズになるはずだから……」

「え、や、ちょっ、ちょっと待って、相馬」

この人は何を言っているのだろう。

「バツはつかないようにするよ。お前が未来、本当に愛する人と結婚して、幸せになれるよう、御園の権力を使って、バツは残さないから……」

「違う、そうじゃなくて」

「他に何か心配?─ああ、健斗さん達への影響とかは上手くやるから心配しなくて良いよ。面倒くさい社交とかも出なくて大丈夫だし、あと─……」

「だから、待ってってば!」

沙耶は枕元に置いておいたぬいぐるみを手に取り、思いっきり、相馬の顔面に叩き付ける。

「……っ?」

ようやく黙って、困惑気味にぬいぐるみを自分の顔面からどかした相馬は。

「……私のことばっかりだよ、相馬は」

沙耶は手を伸ばして、相馬の頬に触れる。

「泣きながら、何を言ってるの」

両頬を撫で、沙耶がそう言うと、相馬は驚いたように目を見開いた。

「本心じゃないでしょう。どれか分からないけど、相馬の今の言葉は泣くほど辛いことなんでしょう。だったら、そんなこと言わないで。私を守る為とか、ずっとそう言って、そばに居てくれるけど、私にはそこまでしてもらう価値ないんだ「あるんだよ!」……っ?」

撫でていた手を攫い、そのまま、両手首掴まれて、肘が浮き、沙耶は完全に身体のバランスを崩す。
倒れ込むように、それなりの勢いで相馬に衝撃を与えたのに、彼は微動だにせず、そのまま、沙耶の手首を解放し、掻き抱く様に抱き締めてくる。

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