世界はそれを愛と呼ぶ


「春の家は、相馬の意のまま。夏の常磐家は、パーティーでの一芝居。秋の西大路家と、冬の天ヶ瀬家はどうするんだろうな?このニ家だけ招かないのも、それはそれで問題だと思うんだが」

「招くんじゃないですか?流石に……」

「内情が知れないのに?」

「でも、そういうのもどうにかしそうな気がしますけど。さっきの相馬の感じからして」

─否定出来ないのが、何とも言えない。
間違いなく、相馬はよっぽどの機密でない限り、簡単に答えてくれるだろうけど、そもそも、相馬がこの街へ来たのは、若さを楽しむ的な話だったはずだ。

何故、こんなゴタゴタに巻き込む羽目になっているのか。

「……俺達には、できることをやるしかないですよ。とりあえず、常磐内部での立ち回りは任せて下さい。霞兄さんたちにも連絡を取りつつ、最近の周辺状況などを共有してもらいます」

「霞がある程度、片付けていてくれたら楽だけどな……」

「霞兄さんは、自分の道を阻む相手には容赦ないですけど、それ以外は……ああ、でも、奥さんからのお願いだったら、全力でやりかねませんね」

「…………沙耶の状況、バレたらやっべぇな」

「やばいんですよね。実は」

弟のくせ、兄の暴走を止める気もなさそうな凌。

「義姉さん、神様とかだったトラウマとかもあって、完全に弱りきっていましたから。その上、兄さんにドロドロに甘やかされたせいで、何かあったら、素直に全部兄さんに言うんですよね。幼子みたいに」

「それは仕方がないことだと思うが」

「問題は義姉さんが幸経由で沙耶を知り、『沙耶に会いたがっている』という点ですよね」

「もし、沙耶の現状が知れたら?」

「霞兄さんのことだから、多分、義姉さんが悲しむ結果にならないよう、動くと思います。でも、使い所としては悪くないというか……鳳月も北御門が無くなって、ホテル系統の事業が主になりました。つまり、鳳月目線からの情報を共有してもらおうかなと。四季の家の人々を上手く誘導して、ホテルに泊まらせるとか」

「……出来るか?」

「出来ますよ。勿論、ホテル業でトップに君臨する御園家には叶わない面もありますが、共同で少し噂を流せば、多分、食いつくでしょう。問題は、北御門と同じく、残党が多そうなところですね」

「俺、またあと30年も戦う気力ないぞ」

「俺にもありませんよ。……北御門の一件に関しては、情報をあやふやにし、ソラさんの件などを隠れ蓑とするように、悪行の端くれが逃げていた状態だったでしょう?それを相馬が完全に奴らの道を塞いだ。おかげで、終わりが見えてきた。こんな面倒くさい鬼ごっこ、正直したくないですし、先に端っこは潰してしまえれば楽なんですけどね」

「常磐家内部で?」

「いや、秋も冬も」

「……正当な後継者がいるなら、そいつにアプローチをかけることが出来れば、或いは」

「俺もそう思います。そこも相馬と話し合いたいですね。相馬じゃなくても、御園と」

「それはそうだな。……あ、常磐の当主がハマっている宗教についても調べておかなくちゃならないな」

「そうですね。メモしておきます」

凌は手元のメモに軽く書き込み、

「本当、悪人のせいで色々と儘なりませんね」

と、呟く。

「仕方がないさ、こればっかりは」

どうしたって、一定数いるのは変わらないのだから。
それなら、世間的の、倫理的な正しさで、その悪を制圧するしかないのだ。

「とりあえず、それぞれ連絡、だな」

ふたりでできることを探し、動いていたら、そのうち、相馬が連絡を寄越すだろう。
そんな呑気なことを考えながら、湊と凌はそれぞれ、情報収集に向かうことにした。
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