世界はそれを愛と呼ぶ

第7節 愛おしく願う未来

☪︎


目が覚めて、楽になっている身体。
手のひらをグーパーを繰り返し、軽くなった身体を実感しながら、相馬はスマホを開いた。

そこにはパーティの概要や、準備に関する報告が様々な相手から多く届いており、招待状もある程度は配り終わったらしく、日程や参加者名簿など、相馬が何もしなくても完璧に完成されたそれが、示されている。

「……やっぱ、水樹達に任せて良かった」

普段、相馬を立てるように何もしない双子は、仕事を任せると、完璧に、迅速に仕上げてくる。
双子が相馬の指示以外に動かないのは、相馬が未だに社交界の一部から“母殺しの子”と嘲笑われているからだ。

相馬が嘲笑われる話題を攫うように、彼らは不真面目な生活を繰り返し、“厄介な双子”として、名を広げようとしている。

(気にしてないから、あいつらはあいつららしく生きて欲しいんだがなあ……)

相馬の願いも何処吹く風、彼らは今日も好き勝手、自由気ままに動き回り、問題児として振る舞っている。

報告メールに手早く感謝と、確認した事項を記し、送信しておく。

「ん……」

スマホを元の位置に戻し、隣を見ると、すやすやと寝息を立てて、彼女は穏やかに眠っている。
頭を撫でると、少し身じろいで……。

「……ありがとな」

何がきっかけだったかはわからない。
でも、真っ直ぐな彼女の瞳に射抜かれたら、衝動を抑え込んだまま、あれ以上、振る舞えなかった。

最中に、どうやっても抑えられない本能は出た。
初めての経験だったから、そんなことは知らなかった。
でも、鬼の姿になってしまった相馬を見ても、沙耶は怯えたり、泣いたりすることはなかった。

柔らかく目を細めて、『綺麗』と微笑んだ。
嬉しそうに、愛おしいものを見るように。

そんな彼女が愛おしくて、泣きそうになった。

彼女がいれば、もう怖いものはないのだと。
ひとりに溺れるのは、統治者として危うい選択であることは十二分に理解しているが、それでも沙耶以外を愛することは出来ないだろうと、心から感じている。

─♪

沙耶の寝顔を眺めていると、音を消していたスマホがバイブだけを鳴らし、着信を知らせた。
画面を見ると、【悠陽】。

朝早く……というほどでもないが、なんだろうと思っている間に電話は切れ、その数分後にはメールが届く。

「…………え?」

そこに書かれていたのは、予想外のこと。
薬の件、第一夫人、第二夫人に関すること。
第三夫人・秋乃さんが隠している秘密。
─何より、悠陽と夏陽が常磐家の、秋乃さんの子どもであり、後継者とされているあの少年の兄だという事実。

御礼で締められているが、全然知らなかった内容。
混乱したまま、情報共有は大事だと、湊さんにメールを送っていく。

悠陽からの連絡によると、真実を知らされた凌さんは驚くを通り越し、急に常磐家についてくると言った双子に、何か知っていたのかと詰め寄ったらしい。

(まあ、何か知った上でついてきたと思うだろうな……あ、これ、麻衣子さん達に知らせた方が……ああ、いや、既に自分で電話したと書いてあるか……)

【何も知らなかった!びっくりした!昔から、直感が優れているとは言われていたけど〜】

なんて、長々と書いてあるが、秋乃さんはとても優しい人らしく、現状を確認するあたり、相馬からの招待状は名指しが良いだろうなと、改善点を考える。

同時に、秋乃さんは家の状況から逃がしただけであり、ずっと会いたかったと言われたことや、成長を喜ばれたことなど、話したいことをいっぱい話したとあった。

監視の目が緩む短時間だけだったが、本当に幸せだったと、感謝の気持ちがめちゃくちゃ伝わってくる手紙。

相馬は常磐家に入れるように手引きしただけだが、それが巡り巡って、彼らを導けたなら良かったと思う。

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