世界はそれを愛と呼ぶ
☪︎


─パーティーの話の最後の仕上げを行っている中。

「─水樹、氷月、一旦、向こうへ帰るぞ」

そう言って、陽向さんが立ち上がった。

「え?向こうって?本家?」

「ああ」

「なんでまた……」

「御園が以前から目星をつけていた、最近、急発展している企業の施設の一部が、この街の廃墟と同じ研究施設の可能性がある話は、前にしただろ」

「ああ〜相馬兄さんに知っていることを悟られるな、って、極秘で説明メールを送ってきてくれたあれね」

陽向は、水樹の言葉に頷いた。

双子になるべく家の汚い面を見せたくない、触れさせたくないのか、基本的に自分が汚れ役をし、双子には上辺だけの役目しか与えない過保護な相馬。

相馬の愛ゆえであることはわかるが、この先一生、御園から逃れられない双子に、それは甘すぎると考えた陽向は、裏でこっそり指導をし、任務を与えていた。

恐らく、相馬は気づいているだろうが、何も言ってこないことを良いことに続けている。
指導の結果、陽向の目から見てだが、双子の方が生粋の御園の人間と呼べるくらい、正直、非道だった。

彼らの父親であり、陽向の弟である春馬や、陽向の父親である陽介(ヨウスケ)は優しすぎると有名で、それでいて、オンオフがはっきりしていることから、畏怖対象とされていたが、どうやら、相馬は彼らに似たらしい。

「兄さんがいなかったら、俺達、既に手遅れなレベルで犯罪者だよ〜」

─なんてケラケラ水樹は笑っているが、それは正直、本当のことであり、双子のどちらかが当主となっていたならば、相馬を嘲った人は勿論、その家も跡形もなく世界から消されただろう。

彼らの相馬への愛は深く、産み母への憎悪も深い。

「希雨を目覚めさせる方法のひとつとして、四季の王と朝霧家が鍵かもしれない、と」

「眠っている要因は、刻印の強制解除のせいじゃないってこと?」

「その要因もあるだろう。心的負担から強制解除、同時に、心的負担に反応して、希雨の中で何かが起こったのだと……総一郎が考えたらしい」

相馬から届いたメールを見ながら告げると、

「─じゃあ、ほぼ正解じゃん。それ」

と、氷月がため息を付く。

「総一郎兄さんが言ったのなら、間違いはないよ。─それで?その施設、誰かが行ったんでしょ。話の流れ的に。何が目的?」

「そこに、夏の王がいるのだと」

「はあ?常磐家で囲われている子がそうでしょ?」

「常磐冬陽、だっけ」

不思議がる双子に、陽向の理解も追いつかないまま。

「えっと、冬陽は実は三つ子の末の子で、上にはふたりいたが、命を守るために養子に出されていたと。そのふたりが、松山悠陽と松山夏陽で、今は常磐家にいる、らしい……三つ子の中で比較的に能力が強かった末を残したが、それでも一人前あるわけではないから、ほぼ監禁状態で過ごしていて……」

「陽向さん、待って。ついていけない」

「安心しろ。俺もだ」

ストップを掛けた水樹にそう言って、メールを見せた。
一通り目を通したふたりは。

「三つ子が集まってなお、力が一人前とならなかったから、施設にいる子も連れてこよう……でも、その判断だけで、綺羽が動くと思えない。他にも何か……」

そこは、相馬も謎に思っているらしい。
相馬に許可を取っていない時点で、おかしい。
綺羽は、勝手な行動をする子じゃない。
総一郎からの知らせを受けたとしても、それが極秘だったとしても、彼女は真っ先に相馬に知らせるし、相馬に指示を仰ぐ、根っからの忠臣だ。

女子高校生とは思えないくらい、さっぱりとした彼女には大切な恋人(御園の血縁ではあるけど)がいるし、相馬の伴侶になること目当てなんてことはない。
(一緒にいると気まずくなるくらい、相思相愛だから)

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