世界はそれを愛と呼ぶ



「沙耶の件でも書いてあったんじゃないのー?」

悩んでいると、氷月が呑気な声でそう言った。

「どういうこと?」

「珍しく、察しが悪いね。水樹。─綺羽にとって、相馬兄さんは神様のような人だった。信仰とかじゃなくて、本能がそうさせるというか……ずっと言ってたでしょ。相馬兄さんが安心して心を預けられる番様が見つかりますように、って」

「言ってたけど……」

「今、一応確認したら、華宮家当主がざっくりと手紙が届いた時点で、説明したらしいよ」

「沙耶のことを?」

「うん。……総一郎兄さんのことだよ。俺達の腹黒さは、総一郎兄さん譲りだ。優しい相馬兄さんには思いつかないだろうけどね、恐らく、沙耶を狙う組織の施設であることとか、その施設に沙耶の弱みがあるとか、相馬兄さんを揺さぶるようなことを書いていたんじゃない?」

「…綺羽を動かす為に?」

「いや?流石にそこまでは……ああ、でも、綺羽が動くなら、恋人の柚琉も動くからね。安全面ではそれなりに考えていたかもしれないけど、勝手に相馬に何も言わずに行動するとは思ってなかったのかも。最初はそのつもりだったけど、綺羽は昔から相馬兄さんに確認取ってからしか動かないじゃん。だから、今回もそのつもりで……でも、外れたんじゃないかな」

一番、総一郎に似ているとも言える氷月が言うならば、それが本当に近い理由な気がしてくる。

「流石だが、本題を忘れそうだ。─相馬が、その施設に行くために、向こうへ行った。沙耶を連れて、だ」

「は?」

「え?……いつ」

「……数時間前」

外では既に、カラスが鳴き始めている。
夕方の風物詩。……なんてことは置いておいて。

陽向はメールを閉じて端末を仕舞いながら、双子に微笑みかけた。

「ということで、急遽、里帰りだ」

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