世界はそれを愛と呼ぶ
「誰かの唯一無二になりたい、らしいぞ?」
「取っかえ引っ変えしてるのに!!??」
我慢できなかった澪が、叫ぶ。
その口を相模が後ろから塞ぎ、「はしたないですよ」と窘めた。
「だっ、だってだって!四季の家の無能な当主達は、彼女に骨抜きにされてるんでしょ!?」
「一応、報告ではそうなってるねぇ」
「え、私の感覚がおかしいの?」
「ん〜というより、利害の一致なんじゃない?彼らにとって、そのお嬢が大切なのは事実かも。でも、それは今のお嬢かな?少し前の方かも」
桜が少し考えながら、
「私が攫われていた時ね、1度だけ、遠くで見えた黒髪の女の子がいたの。彼らに囲まれていたと思う。でも、決して幸せそうではなかった」
思いだしながら、目を細めて。
「誰にも愛されない、誰かの代わりにされるって、中々に苦痛だと思う。だからって、犯した罪は消えないけどね」
愛されていたから、幸せを知っているから、理解することができないのだ。桜の言葉を聞いた澪は理解したのか、そのまま、背後の夫である相模に抱きついた。
両親を事故で亡くし、天涯孤独となった澪。
相模の祖父でもある、郷の長に引き取られて、沢山可愛がられ、愛されて育ち、相模と物語のような大恋愛の末、結ばれた彼女は、愛されない恐怖を知らない。
「今なおも届き続ける、沙耶への怪文書も……相手は既に特定した。こちら側で管理し、今はフェイクを送り続けている」
「捕らえられたものは、総勢、5名の爺だ。沙耶が幼い頃にさらわれた誘拐の件に関しても、関与が認められている。─最も、その時のお嬢は別の人間っぽいが」
薫、相模から上げられる情報。
それはもしかしたら。─なんて。情けは必要ないけど。