世界はそれを愛と呼ぶ
「つまりは、四季の家はそんなくだらない人間に傾倒したってこと?この国を司る、王の立場でありながら?」
無能であれ、肩書きがそうである事実は消えない。
澪の声は震えており、その手を相模が握った。
「─……だから、私が呼び戻されたのです」
絶妙なタイミング。
音も、気配もなく、その場に現れた男。
「ああ。一応、天宮家当主には許可を貰いましたよ」
そう言いながら現れた彼は、肩に流れたひとつに結ばれた長い髪を鬱陶しそうに背中に流す。
「お久しぶりですね。皆様。……尤も、一番縁深い、水樹様、氷月様は、私を覚えていないでしょうが」
─忘れるわけない。忘れない。目に焼き付いた、貴方。
「……忘れるわけない。久しぶり、朝霧」
水樹が口を開くより早く、氷月が口を開いた。
「光栄です」
そんなことを思って無さそうな笑顔。
父さんと一緒に出ていった、朝霧家の当主。
─四季の家全ての家の血を引き、御園直系の血を持つ彼は、数百年ぶりに誕生したとされる、複数の能力を扱うことが出来る存在だった。
先祖にいたとされる特殊な複数の能力もちを望んだ大人のエゴによって、数代に渡った、四季の家との婚姻などを経て産み出された彼は、自分自身の家に辟易していた。
彼の両親が存命の時は、結婚を急かされていた。
しかし、現在、朝霧家の生き残りは彼のみ。
正確にいえば、彼の異母妹を含めたふたりだが、彼のように、四季の家の血を全て継ぐわけでも、特殊な能力を持つわけでもないので、本来ならば、朝霧姓を名乗れない。
そう定められた異母妹は苗字無しで御園家で仕えてくれていた。てっきり、彼自身も妹との関わり方から、あまりその存在を認めていないと思われていたが、彼は朝霧家当主となった瞬間、朝霧姓を異母妹に与えた。
そして、彼ははっきりと結婚も子孫繁栄も行わないことを宣言し、未だ水樹達が幼い頃、父と共に行方不明となっていた。
「私は、隠居していたかったのですが。……総一郎様が」
そんな彼がなぜ、そう思った水樹の視線を察した彼が微笑みながら、教えてくれる。
同じく行方不明になっている長兄が噛んでいるのか。
……どいつもこいつも。
外で動くくらいなら、情報を回してくれればいいのに。
仕事なんていくら片付けてもなくならないのだから。