世界はそれを愛と呼ぶ

第2節 君がため

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─陽向さんの提案で、御園家の居間で話し合い。
もとい、情報の擦り合わせを行うことにした。

「かぐや……御前神夜。歴史上、御園家を裏切った最初の大罪人として名を残される、四代目当主の娘か」

「え、相馬、知ってるの」

「知ってるというか、この家にある書物は全て目を通しているから。その時代の使用人のひとりが日記のように書き記した本が残っていて、それを読んだんだ。1度読めば、全部覚えるからな。勿論、その内容は過去に本来ならば全部燃やし、処分されていなければならないものだから、その場で燃やし尽くした」

「じゃあ、その文献は、相馬の頭の中ってわけだ」

「そうだな。─四代目は何者かに惨殺されていたらしいが、それを行ったのが、その神夜と愛し合っていた男……鷹遠といったか?」

「うん。─彼が本当の、初代鬼帝。怒りのあまり、心を亡くしたんだって」

「だろうな」

はあ、と、相馬がため息をつく。
─現在の鬼帝として、思うところがあるらしい。

御園家の歴史は長い。
しかし、鬼帝は片手で数えられるだけ……相馬を含めて、3人らしい。
理由は不明だったが、今回、沙耶が見てきた記憶で、全ての辻褄が彼らの中で繋がったのだろう。

恐らく、相馬が生まれる100年ほど前まで、彼らは生存していた。死ねずに。最愛のいない、この世界を。
だからこそ、この家は産み出さなかった。
だからこそ、姫が鬼帝を産む危険性は浸透していなかったのだ。

「最愛を奪っておきながら、それだけの始末で済んだ。それなら、四代目はとても運が良い」

「そうなんだ」

「ああ。俺ならもっと、残虐な方法でヤる」

(─何がなんでも、自分の身は大事にした方が良いかも。
余計な被害が出ないように)

そんなことを横で沙耶が考えていることも知らず、相馬は沙耶の手を取ると。

「温もりを分かち合える貴重な存在を、他人の利益のために不当に奪われてたまるか。……にしても、俺が御園要の生まれ変わり、先祖返りねぇ」

はぁ、と、深いため息。
それでいて、何故か沙耶の手で遊ぶ相馬。

「嫌なの?」

「嫌というか……どうでもいいし。沙耶は御園相馬を愛してくれているだろ」

「うん」

「それだけで十分。ただ、」

「ただ?」

「自分の異常性?に、ちゃんと理由付けされるのは構わないが、あまり実感はない。俺自身、御園要と会話したことがある訳じゃないし。だから、俺を超人だと思わないで欲しい。面倒くさい」

「あー……」

御園相馬という時点で、既に超人。
それに、御園要という過去の傑物が加われば、相馬の周辺が騒がしくなる……主に分家が言葉巧みに擦り寄ってくることは間違いないだろうから、相馬の辟易とした顔も理解出来る。

「じゃあ、これは身内だけの話にしよっか。今更、相馬を誰かに譲るつもりもないし、そんなこと出来ないからさ」

「……ああ」

相馬は深いため息をついて、沙耶を抱き寄せる。
ぎゅーっと抱きしめられ、この人の安らぎの場に少しでもなれているのなら嬉しいな、なんて。


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