世界はそれを愛と呼ぶ
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「─もう、やめにしませんか」

ピチャンッ、と、どこかで水が滴る音を聞きながら、真っ暗な道を歩く少女の後ろをついてくる少年は苦虫を噛み潰したような顔で、少女に声をかけた。

少女は金色の髪をなびかせて、ゆっくりと振り返る。

「……どうやって?」

全てを諦めたような目で、今にも泣きそうな顔で。

「貴女が助けなければならないと感じている人が尽きないことは理解していますが、貴女は既に警戒されています!このままだったら!」

「でもっ……もう、おじいちゃんにもおばあちゃんにも会わせてもらえない。私がここで生きていくには、従うしかないでしょう?」

ボロボロな顔で、少年が目を細めれば、彼女は泣いた。

「………………私は、貴方を失いたくないの」

少年─改め、16歳の青年は、真っ青な顔色で、震えながら、泣く少女を抱き締める。

「お母さんを、助けなきゃ……もうずっと、眠っている。私のせいで」

ちぐはぐな目の色。華奢な手からは想像出来ない、怪力。
金色の髪は美しく、人を魅了するだろう。

「……  」

青年は、少女の名前を呼んだ。
過酷な運命を前に産まれた少女は、人として生きられず、名前に反するような渇きが、彼女を襲う。

「愛しています」

だから、彼女は青年を愛さない。
青年を、愛することが出来ない。

でも、青年は少女を誰よりも愛している。

「……貴女を、誰よりも愛している」

少女は泣く。苦しくて、寂しくて、愛おしくて。
それを愛だと認めることは許されず、小さい頃の夢を思い出しながら、母の温もりを思い出す。

「何があっても、俺は貴女の元に生きて帰ってくると、誓いますから。だから、一緒に生きていく未来を探しましょう。お願いです、俺も、貴女を失いたくない……」

─少女は、まだ齢10歳前後である。
しかし、とあることが原因で、彼女は成長が早い。

それでいて不完全だからか、心を置き去りに、何もかもが変わっていく。

「……っ、苦しい、」

「お嬢」

「助けて、、私っ」

「大丈夫です。血も、俺のを飲めばいい」

青年はそう言いながら、首元を彼女にさらけ出して。
彼女は泣きながら、

「ごめんなさいっ」

甘い誘惑に、噛み付いた。


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