世界はそれを愛と呼ぶ
「─御家族が帰ってくるまで、俺の家で待機な」
「えっ、なんで」
「心配だから」
「いやいや、大丈夫だよ。何歳だと思ってるの」
「婚約者の心配くらいしてもいいだろ」
「婚約者って……」
ほぼ初対面、勢いと打算で結んだ婚約関係。
沙耶は顔を歪めつつ、相馬の顔を見て、何かを諦めたようにため息を零す。
「なんか、本当、相馬にめちゃくちゃ迷惑かけている気がする……」
そんな沙耶をなだめて、
「ひとりは寂しいだろ?」
と言えば、
「…………うん」
「ご飯も作ってやるから」
「……はい」
「自分を大切にする方法を、どうか覚えていってくれ」
「……」
「─さ、とりあえず、学校のものも持って行こうか」
相馬が言いたいことを言って家に上がれば、
「相馬ってずるいよね……」
と、沙耶が呟くので、
「ハハッ、ほら、沙耶、早く」
階段口でそう言いながら手招きすると、
「いやぁ、やっぱ、相馬ってお人好しすぎる……」
と、相馬が生まれて初めて言われた言葉を漏らしながら、沙耶は相馬の手を握った。