世界はそれを愛と呼ぶ



「─あと、お前の番だろ。彼女」

とっくに見抜いていたらしい。
そう言い切った薫に頷くと、

「話が変わってくるね、それは」

と、甲斐が目を細めた。

甲斐は相馬の秘書であり、相馬の世話係に近いが、何故か、相馬よりも相馬の番を待ち侘びていた。

(……どうせ、俺をひとりにしないとか、そんな理由)

どうでも良いし、興味もなかった番。
実際、出会ってしまえば、ほとんどの時間一緒にいるのだから、本当に不思議であり、それくらい居心地が良い。

「相馬の番か……下手したら、世界情勢が動くね」

「そこまで!?」

「本当にバカにできないんだよ、光輝(コウキ)」

相模の言葉に、驚く光輝。
それを窘める千歳に答えるように、

「沙耶のために、今の時点で伊マフィアトップが動きはじめているからね」

と、氷月が言った。

勿論、全員黙り込んで、固まる。

「氷月、語弊がある。……沙耶の曾祖父母がたまたま、伊マフィアなだけだからな」

本当に、ただそれだけの事。
相馬は訂正したつもりだったが、光輝は。

「だから高身長」

と、ぽんっと、納得がいったように手を叩いた。

「女性にしては高身長な子だな〜!って、思ったんだよな。久々に視線の高さが同じだった」

「まぁ、光輝は低い方でも、桜達よりは高いしな……」

「ちがーう!俺が低いんじゃなくて、お前らが高すぎるの!これでもちゃんと、166あるから!」

そう言って怒るが、彼は幼なじみの男の中では一番低く、年下である氷月や水樹に抜かされている事実も、彼的には耐え難いらしい。

「─で?そういう人たちがわざわざ出向いてくる、その上、少し前まで彼女に出ていた行方不明の情報、色々なことを考えても、早急すぎるよな。話が」

「桜の件とかね。どうやって、あの中に桜を運び込んだ?」

「そういえば、地下に道があったという報告があったな」

「相馬の使い魔達からのね」

「廃墟も、かつての西園寺家所有のものだろ?」

「この街で起こった事件は西園寺家のあとだけど……」

相馬が黙っていても、勝手に話が進んでいく。
適当にでも、情報を渡しておいて良かった。

「要約されて送られてきた、あの気色の悪い紙の送り主?は特定したのか、相馬」

「んや……さすがに無理」

「天下の御園でも?」

「天下って……まぁ、手段を選ばなくていいのなら、見つけ出せないこともないだろうけど」

「代償は」

「国半壊で済めば良いんじゃない」

相馬はエプロンを外しながら、長い髪を解く。


< 99 / 185 >

この作品をシェア

pagetop