世界はそれを愛と呼ぶ
「─あと、お前の番だろ。彼女」
とっくに見抜いていたらしい。
そう言い切った薫に頷くと、
「話が変わってくるね、それは」
と、甲斐が目を細めた。
甲斐は相馬の秘書であり、相馬の世話係に近いが、何故か、相馬よりも相馬の番を待ち侘びていた。
(……どうせ、俺をひとりにしないとか、そんな理由)
どうでも良いし、興味もなかった番。
実際、出会ってしまえば、ほとんどの時間一緒にいるのだから、本当に不思議であり、それくらい居心地が良い。
「相馬の番か……下手したら、世界情勢が動くね」
「そこまで!?」
「本当にバカにできないんだよ、光輝(コウキ)」
相模の言葉に、驚く光輝。
それを窘める千歳に答えるように、
「沙耶のために、今の時点で伊マフィアトップが動きはじめているからね」
と、氷月が言った。
勿論、全員黙り込んで、固まる。
「氷月、語弊がある。……沙耶の曾祖父母がたまたま、伊マフィアなだけだからな」
本当に、ただそれだけの事。
相馬は訂正したつもりだったが、光輝は。
「だから高身長」
と、ぽんっと、納得がいったように手を叩いた。
「女性にしては高身長な子だな〜!って、思ったんだよな。久々に視線の高さが同じだった」
「まぁ、光輝は低い方でも、桜達よりは高いしな……」
「ちがーう!俺が低いんじゃなくて、お前らが高すぎるの!これでもちゃんと、166あるから!」
そう言って怒るが、彼は幼なじみの男の中では一番低く、年下である氷月や水樹に抜かされている事実も、彼的には耐え難いらしい。
「─で?そういう人たちがわざわざ出向いてくる、その上、少し前まで彼女に出ていた行方不明の情報、色々なことを考えても、早急すぎるよな。話が」
「桜の件とかね。どうやって、あの中に桜を運び込んだ?」
「そういえば、地下に道があったという報告があったな」
「相馬の使い魔達からのね」
「廃墟も、かつての西園寺家所有のものだろ?」
「この街で起こった事件は西園寺家のあとだけど……」
相馬が黙っていても、勝手に話が進んでいく。
適当にでも、情報を渡しておいて良かった。
「要約されて送られてきた、あの気色の悪い紙の送り主?は特定したのか、相馬」
「んや……さすがに無理」
「天下の御園でも?」
「天下って……まぁ、手段を選ばなくていいのなら、見つけ出せないこともないだろうけど」
「代償は」
「国半壊で済めば良いんじゃない」
相馬はエプロンを外しながら、長い髪を解く。