取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「問題ありません。一週間以内に全額お返しします」
 割って入った千景に、男の顔から笑みが消えた。

「お前、どこのどいつだ」
 どすのきいた声だった。先ほどまではまがりなりにも愛想があったが、今は黒い霧を背負い、威圧するべく千景にすごむ。
 だが、千景はやわらかな笑みを浮かべたまま、まっすぐに彼を見返した。

「彼女の婚約者です」
「こっ」
 思わず声を上げた優維に、千景がすっと手を挙げた。黙っていろということか。察してぎゅっと口をつぐむ。

「草凪くん、どういうことだね!?」
 直彦もまた驚いて声を上げる。
「先ほどプロポーズして了承をいただきました。このような形でのご報告は申し訳なく思います」
 優維はなにも言えずになりゆきを見守る。父にならあとでどうとでも説明できるだろう。

「わかってんのか、二千万だぞ!」
 男は下から首を巡らせて千景をねめつける。
「払いましょう。ですから今日はお引き取りを」
「第三者弁済は拒否する」
 男は即答した。

 第三者弁済とは、法律上は義務のない第三者が借金を代わりに払うことだが、債権者は拒否できる。あとから返済金を返せともめるのを避けるため、拒否権が認められているのだ。

 しかし、と千景は思う。
 今回は優維を嫁に求めていて、だから弁済は拒否されたのだろう。
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