取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 玄関から見えるところに、すでにタクシーが来ていた。
 運転手は彼からスーツケースを受け取ってトランクに詰める。
 彼を乗せたタクシーが発車するのを見送り、優維は涙を零した。

 彼は日本を離れてしまう。
 だが、まだ終わったわけじゃない。

 優維は決然と顔を上げた。
 自分にはまだやらなくてはならないことがある。千景の潔白を証明するために。



 夕方、スマホの通知で聖七の到着を知り、直彦に外出を伝えて玄関を出る。
 彼は神社の駐車場に車を止めて待っていた。黒い高級そうなSUVだ。
「話ってなんですか?」
 車に乗り込んだ直後に勢いこんで優維は聞いた。

「すみません、あとにさせてください」
「……はい」
 優維は了承したが、心は()いて焦っていた。

 彼女を乗せた車は予想外のところに到着した。
 ラグジュアリーなサービスで有名なパニンシアホテルだ。外観から豪華で、車寄せには白い制服のベルスタッフが待機している。
 戸惑う彼女を置いて先に聖七が降り、助手席のドアを開ける。

「手を」
 差し出された手を戸惑いながら取り、優維は車を降りた。
 聖七がベルスタッフにキーを渡すと彼が車を運転して去っていく。
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