取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「レストランを予約しています」
「聞いてません」

「ゆっくり話をするためですよ。ここなら誰にも邪魔されないし、内密の話が可能です」
 悪びれもせず彼は言う。
 優維は困惑し、返事ができない。

「……やはり私では駄目ですか」
 優維はぎゅっと眉を寄せた。また彼を『元ヤクザの息子だから』と悲しませてしまうのだろうか。
「いいえ、信用してます」
 優維はできるだけにこやかに答えた。

「ありがとう、信頼には応えないといけませんね」
 聖七はさわやかな笑顔でそう言った。

***

 タクシーに乗った千景は大きくため息をついた。
 思い出されるのは一連の出来事だ。
 濡れ衣を着せられたあと、警察を呼ぶ提案は無碍に却下された。

 警察沙汰にしたくない気持ちはわかる。
 だが、あまりに一方的ではなかったか。

 優維が無条件で信じてくれなかったのがショックだった。
 だが、仕方がない。愛もなく夫婦になって間もない。一方的な愛に戸惑う彼女はかわいいし、最近では心を開いてくれているようにも思っていた。が、結局は信頼関係を築くほどには至っていなかったのだ。
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