取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「とりあえず、その人を離してもらっていい?」
 警察官の言葉に、千景はためらう。
 だが、聖七が抵抗の様子を見せないので、ゆっくりと様子を見ながら彼から離れた。
 優維ははらはらしながら見守るが、聖七は床に寝そべったままだ。

「おにいさん、立てる? ちょっと署のほうで話を聞こうか」
「助けていただき、ありがとうございます。いきなり彼に暴力を振るわれて、困っていました」
 聖七が弱々しく言う。
 優維は驚愕した。この後に及んで、彼は被害者になろうとしている。こんな弱々しい姿を見せられたら、なにも知らない人は信じてしまいそうだ。

「その話は無理だな」
 千景はポケットからスマホを出して彼に示す。
「ここに来たときからずっと、警察への通報をつなげっぱなしにしていた。音声は警察で録音されている」
 聖七はぎいっと千景をにらみつけた。

「すべて警察に話すべきだ。これ以上罪を重くしたくないならな」
「は! お前の言うことなんか聞くか」
 聖七は吐き捨てる。
 応援で駆け付けた警察官数人に囲まれ、彼は部屋を出て行く。

「千景くん、良かった」
 優維は思わず千景に抱き着く。
「……なんとか間に合った、のかな?」
「うん。ありがとう、千景くん」
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