取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「だが、夢をあきらめさせてまで男社会に優維を放り込むのはなあ。できるなら苦労させたくない」
 ようやく優維は理解した。

 女だから駄目だと思われていたのかと思っていた。
 ただ父として、親心からだったのだ。
 優維はにこっと笑った。

「前から言ってるでしょ。今は跡をついで神社を立て直すのが夢なの」
「そうか……そうだったな」
 直彦はなんども頷き、千景を見る。

「じゃあ、千景くんは安心してハワイに行けるな」
 言われて、どきっとした。そうだ、彼はハワイに行くはずだったんだ。

「……やっぱり行くのよね」
 優維が尋ねると、千景は頷く。
「日を改めて、一週間ほど行ってくるよ」
「一週間!?」
 優維は驚いて声を上げた。

「ハワイの神社に奉職するんじゃなかったの?」
「そんなことは言ってない。なんでそんな勘違いを?」
「だって、辞めてから行くって……」

 記憶を辿ってみるが、たしかにハワイに行くとしか聞いてない。さらに、父は彼にお土産を頼んでいた。帰ってくるのがわかっていたからだろう。

「あのとき、やっぱりちゃんと聞いてなかったんだな。出発のときも今生の別れみたいな顔をしていた」
 千景が苦笑した。
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