取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る



 その後、優維は気になることがあってまたシャワーを浴びた。
 だが、どれだけ洗っても優維が気にするそれは落ちることがない。
 落ちこんで自室で休んでいたが、千景が寝室に入った気配に気が付いて部屋から出た。

 扉の前でためらい、それから勇気を出してノックする。
 どうぞ、と返事があって、優維は扉を開けた。
 中にはルームウェアの千景がベッドの端に座っていた。

「どうした?」
「お礼を言いたくて……」
「それほどのことはできてないけどな」
 千景は自嘲するような笑みを浮かべた。

「結局、君を危険にさらした」
「あなたのせいじゃないし、助けに来てくれたわ。、もし来てくれなかったら……」
 その先は言うのも嫌で、言えなかった。

「最悪の事態は避けられて良かった」
 千景の言葉に、優維はうつむく。
「とりあえず座らないか?」
 彼がベッドをぽんぽんと叩くので、優維は隣に座った。

「大藤神社で宮司に『どろぼう』とか『恩知らず』とか罵られたことがある」
 思いもかけないことに、優維は息を飲んだ。

「だが、俺はなにも盗んでいない」
「だったらどうして」
「宮司の娘さんに言い寄られていた。大藤神社をやめるとき、父親である宮司に俺にもてあそばれたと言ったようで、宮司に怒鳴られた。それを誰かに見られて噂になったようだ」
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