取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 彼はベンチにジャケットを敷いた。
「どうぞ」
 この上に座れということらしいと気が付いて驚いて首を振った。

「駄目よ、敷物代わりにするなんて」
「振袖が汚れるほうが困るだろう?」
「立ってれば大丈夫」
 言った直後、目がくらんでふらついた。すかさず千景が優維を支える。

「大丈夫じゃないな、座って」
「……ごめん」
 優維は千景に支えられてベンチに腰掛ける。
 その隣に千景も座った。ベスト姿もかっこよくて、優維はどきどきした。

「今日はいろいろとごめんなさい」
「気にしないでくれ。恥ずかしいけど学生時代に仮想通過で儲けたことがあって、だから大丈夫なんだ。急騰や暴落が面倒で今はやってないが」

「すごいね。だけど、申し訳ないよ。私があちらに嫁に行って済むならそうしたほうがいいかも」
 優維は精一杯強がって笑って見せたが、千景は笑わなかった。

「借金のカタに娘を嫁がせたい親はいないだろう。ヤクザみたいな男と君が結婚なんて猫に小判、猫に経だ。そもそも君が背負う必要はない」
「草凪君に迷惑をかけるなんて、なおさらできないよ」
 むしろ自分と彼のほうが猫に小判のように思える。

「俺はヤクザ以下か?」
 唐突な問いに、優維は目を丸くした。
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