取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「それほど俺との結婚が嫌ってことか?」
「違うよ、そんなことない!」
 優維は慌てて否定した。

「なら、俺と結婚してくれ。第三者弁済をせず無利子で貸すにもそのほうが都合がいいし、婿入り婚は俺にもメリットがある。やってみたいことがあるんだが、勤め人として働いている神社では難しい。だから婿として君の神社で働きたい」
「やってみたいことって?」

「ほとんどの神社は経営難で後継者不足だろう? 神社が儲かるとなれば、神職になりたい人も増えるはずだ。そのモデルケースを作りたい」
「でも神社は営利団体じゃないから……」

「稼いだ分は社会貢献に使えば問題ないだろう。こども食堂や地域振興などいくらでもある」
「そうかもしれないけど」

「経営の立て直し、これはやってみたいことのひとつだ。そのためには根古間神社は俺にとってはうってつけの舞台と言える」
「……それはそうね」

「古い慣習も大事だが、時代に合わせた神社の在り方を提示できたらと思うんだ。昔から神社は神と人だけではなく、人と人をつなぐ場所でもあった。猫の目のように状況が変わるデジタルの現代だからこそ、こういう伝統的な……っと、すまない、ちょっと熱くるしいかな」
 恥ずかしそうに照れるから、なんだか彼がかわいく見えてしまう。
 いい人だ。だからこそ巻き込んでいいようには思えない。

「やっぱり結婚はお断りします。あなたならもっといい人がいると思うから」
「君以上の適任はいない。取引と思ってくれてかまわない。お互いにメリットがあるんだ」
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