取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「うん……」
 濁すように返事をする優維に、千景ははっとする。
「悪い、急ぎすぎたか?」
「ううん、そんなことない」
 自分にできなかったことをさっと始められる彼がうらやましくて、できなかった自分が情けなくて悔しい。

「君のやりたいこと、メモしておいてくれ。一緒に盛り上げていこう」
「うん、ありがとう」
 優維はただ笑顔を心がけ、礼を述べた。



 神社を閉めたあと、直彦は普段着に着替えて出かけていった。
 夕食は優維が用意して、千景は喜んで食べてくれた。

「妻として合格できたかな」
「もちろん。今度は俺が作るから食べてくれるか?」

「料理できるの?」
「ひとり暮らしをしていたから、ある程度はね」
「すごいね。父は料理ができないのよ」

 母が生きていたころは母が家事を一手に引き受けていて、母が亡くなってからは忙しい父に代わって優維が家事をしてきた。それが当たり前だと思っていたから、男性でも家事をすると言われると不思議な気がする。

 その後は交代でお風呂に入り、それぞれの部屋ですごした。
 隣の部屋に彼がいると思うと妙に緊張してしまい、くつろげなかった。テレビもスマホも集中できない。
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