取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「お義父さんは気を使って外出してくれたんだろう」
「え、ちょ、待って、え?」
 優維は混乱し、千景が示唆する内容をわかりたくなくて思考が空転する。

「俺たちはもう夫婦だ」
「でも、取引って……」
 肉体関係は発生しないと思っていたから、彼にそうする意志があったのが意外すぎる。

「先に言っておくが、俺は君を愛している」
「う、嘘!」
「嘘じゃない」
 見上げる彼の瞳は熱を帯びたように潤んでいた。

「そうでなければ結婚などしない」
 言われて、優維は硬直する。自分は彼を愛していないが、神社のために結婚を選んだから。
 そもそも、いつ自分を愛するタイミングがあったのだろうか。きっかけがまったくわからない。同様に、自分は彼を愛するきっかけがなかった。

「ごめん、私……」
「君が俺をなんとも思っていないことはわかっている。だから気にしなくていい」

「だけど……」
「これから愛してくれればいい」

「これからって」
 言い淀む優維の頬に、彼は軽く口づけをする。
 それだけで優維の全身が熱くなった。
< 32 / 148 >

この作品をシェア

pagetop