取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「君はなにを想像して言ってるのかな」
「意地悪!」
 プイっと横を向くと、くすりと彼が笑った。

「悪かった、君を愛するがゆえだから許してくれ」
「またそんなこと言って」
「こっちを見て」
 言われて、優維はちらりと彼を見る。

 まっすぐな、だけど甘さをたっぷりと含んだ目が優維を見つめる。
 彼の手がそっと伸びて彼女を引き寄せ、膝に乗せるようにして唇を奪う。

 結婚してから何度目の口づけかわからない。彼のキスはいつも彼女を陶酔へと誘い、酩酊させる。
 社務所でなんて、いつ誰に見られるかわからないのに。神域で仕事中にキスなんて駄目なのに。

 なのに背徳感がなおさら心臓をどきどきさせてしまう。
 貪るようなキスを終えると、彼はさらに彼女を抱き寄せた。

「今夜……」
 千景が言いかけたときだった。

 どんどん、と扉が叩かれて、優維は慌てて千景から離れた。
 がら、と引き戸が開いて直彦が入って来る。彼はふたりが結婚してから、社務所に入るときにノックをするようになった。

「今日も暑いなあ。明日も暑くなりそうだ」
 どきっ! と心臓が大きくはねた。が、外気温のことを言っているだけだと気が付いた。

「明日は熱中症への注意を呼びかけようと話していたところです」
 千景はなにごともなかったかのように穏やかな口調で言い、優維はかくかくと頷く。
< 49 / 148 >

この作品をシェア

pagetop