取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る

「仕事、大変なのか？」
「大丈夫。たまにあるの」
　嘘だった。この会社に勤めてから今まで、早く出社してまでする仕事なんて、あったことがない。
「無理するなよ」
　千景は優維を抱き寄せ、その額にキスを落とす。

「ありがとう。あなたも無理しないで」
　優維はすぐに体を離した。
「仕事が落ち着いたら有休をとってもらえないか」
　千景の提案に、優維は戸惑って彼を見る。

「平日なら時間を作れるだろうから、新婚旅行に行かせてもらおう。お義父さんには少し負担をかけてしまうが、国内で二泊三日くらいならなんとかなるんじゃないかな」
「私のほうは……まだわからない」

「すぐには休めないだろうし、だけど考えておいてくれ」
「うん……」
　曖昧に返事をして、優維は自分の部屋に引っ込んだ。



　それから週末までは言葉少なに過ごし、土曜日には巫女舞保存会による巫女舞の発表会が行われた。
　巫女舞の発表会は滞りなく進み、千景も鉾舞の神楽を披露した。
　普段とは違う華やかな狩衣で舞う彼は、流れる汗すら美しい。

　優維も舞ってはどうかと誘われたし、千景が見たがっていた。
　結婚するまでは自分も保存会に所属して発表会で舞ったこともある。