取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る

「千景さん、元気そうで良かったわ。突然辞めてしまったときは驚いたけど」
「ようこそお参りくださいました」
　千景はかみ合わない言葉を述べて慇懃に頭を下げた。

「行く先も教えてもらえなくて心配したのよ。連絡もとれなくなるし。いろんな人に聞いてまわって、やっと来れたわ。こんな小さな神社で働いているなんてもったいない」
　千景の目に険が宿るが、彼女は気付かず続ける。

「結婚したって聞いたけど、嘘よね？」
「本当ですよ。紹介しましょう、妻の優維さんです」
　千景は笑みを顔に戻して紹介した。優維は慌てて頭を下げる。

「初めまして」
「優維さん、こちらは大藤神社の宮司の娘さんです」
「水浦佳代(みずうら　かよ)です。初めまして」
　佳世は会釈して、値踏みするように優維の全身に視線を走らせる。

　気圧された優維が身じろぐと、その肩を千景が抱いた。
　佳世は唇を震わせた。

「……結婚、本心じゃないでしょう？」
　彼女の言葉に優維は顔を引きつらせた。

「失礼ですよ」
　千景は冷たく拒絶する。
「父のことなら心配しなくていいの。今は許してくれてるわ、だから戻って来てほしい」
「そういう問題ではありません」
　なにが起きているの。