「「完全なる失恋だ」」と思っている夫婦ですが、実は相思相愛です!~無愛想な脳外科医はお人好し新妻を放っておけない~
 首を左右にふる。どうやらひとりのようだ。そして手がかなり腫れてきている。

「他に痛いところはある?」

 私が尋ねると肩を指さした。ヘルメットをちゃんとかぶっていたし、見たところ頭は打っていなかった。

「ちょっと待ってね」

スマートフォンを取り出して、近くに病院があるか調べる。日曜日の夕方。

 個人病院はやっていないだろう。救急車も考えたけれど、付近は通行止めが多く時間がかかりそうだ。

「どうかしたの?」

 お年を召した女性が私たちを心配して話かけてきた。

「この子、ケガしてしまって。この子、御存じですか?」

 女性が女の子の顔をじっくり見ている。

「すぐそこに住んでいるんだけど、わからないわ。自転車でお祭りに来たのかしら?」

 女の子に詳しい話を聞きたいが、ずっとしゃくりあげて泣いている。まずは医師にみせるべきだ。

「このあたりに病院はありますか?」

「この先にあるけれど、救急車やタクシーを待つよりも直接向かった方が早いと思う」

「そうですか、教えてくださってありがとうございます」

 スマートフォンの地図を見せて、詳しい場所を教えてもらう。

「病院に行って、そこからお母さんたちに電話してもらおうか?」

 私の言葉に女の子は泣きながら頷いた。

「じゃあ、どうぞ」

私は女の子の前にかがんで、背中を見せる。

「どうぞ、おぶっていくから乗って」

「え……」

 戸惑っている女の子に声をかける。

「歩いていく方が早いみたいなの。なんとか左手を使わずに私に体を預けて。大丈夫だから!」

 必死になって女の子を説得していると、男の人の声が割り込んできた。

「そんな細腕で背負うなんて、無理だ。けが人が増える」

はっとして顔を上げると、私より少し年上ぐらいの男の人が立っていた。

「ちょっと、見せて」

 男性は女の子の怪我の確認をしている。

「腫れてきているな」

 そうつぶやいたと同時に「少し我慢して」と言って、女の子を抱き上げた。

 そして迷うことなく早足で歩き始めた。

 私は女の子の乗っていた自転車を、女性に預かってもらえるように頼むと、女の子を抱えた男性を追いかけた。

 男性の早足は、私にとっては駆け足の速さだ。それくらい足の長さの違いから一歩の大きさが違う。

 必死になって女の子が自転車のカゴに入れてあったポシェットを持っておいかけるけれど、なかなか大変だ。

 気のせいかな……足がちょっと痛い気がする。
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