「「完全なる失恋だ」」と思っている夫婦ですが、実は相思相愛です!~無愛想な脳外科医はお人好し新妻を放っておけない~
 レントゲンを撮り骨折の処置をしている間、ご両親から連絡があった。

 こちらに向かっているけれど、渋滞に巻き込まれているらしい。

 動かさないように固定されている姿を見ると痛々しい。けれど処置が終わったことで女の子の氷上は少し明るくなった。

 それを見ただけで、少しほっとできた。

「お母さん、こっちに向かってるからね。もう少し一緒に待とうね」

「うん」

 そんなやり取りをしていると、外からドーンという音が聞こえてきた。

「花火……」

 女の子がぽそっと言葉にした。

 ケガさえしなければ、今日は夜店や花火を楽しんだのだろう。だから落ち着いた今になって残念な気持ちになっているのだろう。

「花火、見るか?」

「うん!」

 南雲先生が声をかけると、女の子はうれしそうに笑った。それを見て私も笑った。

「君も一緒に」

「はい」

 当たり前のように女の子を抱っこして、歩き出した。

 彼が案内してくれたのは、病院の外階段だった。

「わぁ~!」

 外に出た途端、花火がドーンと上がるのが見えた。女の子と私はふたり揃って感嘆の声をあげた。

 次々と花火が上がっていく様子を、三人で眺める。

「大きい、見て!」

「すごいね。ほら、次のも綺麗だよ」

 笑顔の女の子と私は、ふたりで花火の感想を言いあう。

「こんな素敵な場所、御存じだったんですね」

「あぁ、地元だからな。この病院にもずいぶん世話になった」

「南雲先生――あっ、さっきお医者さんたちが名前を呼んでいたので、勝手にすみません」

「いや、それはかまわないが。君の名前は?」

「私は、一ノ瀬美与といいます。ここには旅行できたんです」

「旅行できたのに、こんなところで人助けか」

「ふふふ……不思議ですね」

 本当なら今頃は電車に乗って、お土産を手に東京に戻っているはずだ。

「ただ、こんな素敵な花火が見られたのでよかったです。何年振りだろう」

 日々忙しく過ごしていて、ゆっくり花火を見るチャンスなんてなかった。

「これも旅の思い出です」

 忘れられない思い出になった。

「思い出……か」

 南雲先生も花火を見てほんのりと口角をあげた。その姿が美しくて思わず目を奪われてしまった。

 花火を終えたころ、女の子のご両親が迎えに来た。

 救急の待合室で、それまでは歩くのさえつらそうだったのにお母さんの胸に走って飛び込んでいった。
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