June〜幸せにする〜
「新、違うの!結婚したいとかじゃないから。その雑誌の付録が好きなキャラクターのやつだから買っただけ」

新は表紙に書かれている付録の情報を見る。今回の付録は保冷バッグだった。その保冷バッグに描かれている犬のキャラクターは、確かにみずきが好きなキャラクターである。

「私は新と一緒にいられるだけでいいんだよ。結婚していないカップルなんてたくさんいるし、結婚や出産が人生の全てじゃないんだから」

みずきは笑いながら明るく言う。気が付けば、新はみずきを抱き締めていた。

「僕は、怖いから何も考えないようにしてきた。ずっと逃げてた」

「新?」

「みずきをきっとこんな僕は幸せにできないって思っていた。でも、みずきが誰かに取られるのはもっと嫌だって思ったんだ」

胸の中がただ苦しい。泣き出してしまいそうになる新を、みずきがそっと抱き締め返した。そして優しい声で言う。

「幸せにしなくていいんだよ。私が幸せでも、新が幸せじゃなきゃ嫌だ。……一緒に幸せになりたい」

体がゆっくりと離れる。互いに見つめ合った。みずきの顔が少しずつぼやけていく。新は笑った後、あの言葉を口にする。

「こんな僕でよければ、結婚してくれませんか?」

「はい。こんな私でよければ、喜んで」

唇が重なる。家族が何か二人は知らない。しかしその答えはゆっくり探せばいい。初めて新はそう思えた。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

劣等生と光の花束〜ある魔女の秘密〜

総文字数/92,754

ファンタジー196ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ずっと、自分の居場所なんてないと思ってた
恐怖探偵団と呪われた願い事

総文字数/0

ホラー・オカルト0ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人の言葉は、ただの言葉じゃない。 悲しみ、嬉しさ、様々な感情を届けてしまう。 「言葉が時に呪いとなってしまうこともあるの」 私の言葉は、誰かの呪いになっていないかしら?
The Brave

総文字数/20,039

ファンタジー45ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「独りやったら、絶望しかなかった。でも今はさ、独りとちゃうから」 「家の名に縛られることはないと思うよ。自分で自分の道を切り開かなきゃ、人生を生きる意味がない」 「二人はわたくしにとって、大切な家族です。愛しい二人を放ってはおけませんわ」 「怖いと思うことは別に悪いことじゃねぇ。怖さは自分の身を守るためにある感情だからな。逃げるということも、一つの道だ。立ち向かっていくことだけが、正しいわけじゃない」 「守ってあげられなくて、ごめんね。勇気がなくて、本当にごめんなさい」 「こっちのことより自分を大事にしなよ〜?自分自身が壊れちゃったら意味ないよ〜」 独りじゃない。だから、戦える。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop