だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~

本音を隠して

紗季(さき)、すっごく綺麗」
「うんうん。いつも以上にね」

 今日は私、春野(はるの)紗季と桐島(きりしま)和也(和也)との結婚式が行われている。
 歓談の時間になり、新婦である私のもとへ友人ら五人が真っ先に集まって来てくれた。

「ありがとう」

「それに、この式場もとっても素敵。披露宴が始まる前にガーデンを見せてもらったけど、可愛いかったなあ。憧れちゃう」

 胸の前で手を組んで瞳を輝かせた友人に、周囲も笑顔でうなずいた。

 ジューンブライドもいいかもしれないと考えていたけれど、やっぱり梅雨入りする前のこの時期を選んで正解だった。
 事前に行ったガーデンでのロケーション撮影では、背景に見事な青空が広がって満足な仕上がりになったし、こうして彼女たちにも喜んでももらえたのは私もうれしい。

「旦那さんも、優しそうな人だし」
「ねえ。びっくりするくらいカッコいいんだから」

 友人に連れられて少し離れたところで話をしている和也さんへ、視線を向ける。身長が高いから、彼の姿はすぐに見つけられた。

 私より八歳上の彼は、現在三十五歳になる。
 意志の強さを感じさせるキリリとした目もとが印象的だが、どんな話をしているのか今は楽しげに緩んでいた。形のよい薄い唇は、終始口角が上がっている。気心の知れた仲間と過ごしている和也さんが、リラックスしているのが伝わってきた。

 次の瞬間。チラッとこちらを見た彼と目が合い、ふわりと微笑みかけられる。
 一年の間交際してきたのだから彼の整った容姿は見慣れているはずなのに、特別な日のせいか普段に増して素敵に見えてドキリと鼓動が跳ねた。

 一緒にいた男性たちもそろってこちらに顔を向けてきたのは、私の話をしていたからだろうか。失礼にならないように、彼らに向けて微笑みながら軽く会釈をしておく。

 途端に、和也さんが周囲から軽く小突かれる。どうやらふたりの仲を冷やかされているようだと気づき、距離があるのに私まで恥ずかしくて頬が熱くなった。
 巻き込んで申し訳ないとでもいうように、和也さんは眉を下げた表情で再び私と視線を合わせた。
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