だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「視線だけでやりとりしちゃって。仲がいいのね」

 友人に茶化されて、ハッとする。和也さんとふたりだけの世界に入っていたのは、見抜かれていたようだ。

「うらやましいなあ」
「はあ……紗季の旦那さん。あのご友人たちを紹介してくれないかしら」
「それ、私もお願いしたい」

 和也さんのお父様は、観光業や百貨店の経営など様々な分野の事業を国内外で展開する桐島グループの会長を務めている。彼自身は現在、グループのメイン企業である観光部門を担う関連会社の社長に就任して数年が経つ。

 招待客の中には仕事のつながりがある人も多く、若くして会社を経営している男性も複数いる。

 彼が今話している相手もまさしくそんな人たちだが、ビジネスのつながり以前に学生時代からの友人だと少し前に紹介された。
 どの男性もスラリと背が高く、整った顔立ちをしている。そのため、さっきから会場中の女性たちの視線を独占しているのは一目瞭然だった。

「優しそうな人たちばかりだったから、後で声をかけみるといいかも」

「そんなの無理よ、無理」
「すぐに積極的な女の子たちに囲まれちゃうんだもん」

 愚痴をこぼす友人らに、思わず苦笑した。

 人と人とのつながりを大切にしたくて、私たちの結婚式は歓談の時間をメインにしている。主役である私と和也さんもある程度自由に動けるような流れにしたのは正解だったようで、堅苦しさもなく気軽に話しかけてもらえる。
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