すべての愛を君だけに。
なーちゃんに手を振って別れる。
教室に1人、廊下では他のクラスもHRが終わって帰る生徒の話し声で騒がしい。
静かになったら行こう…。
それまで教室で待とう。
「雨」
「…天ヶ瀬くん」
廊下から聞こえた声の方に顔を向ける。
天ヶ瀬くんが教室に入ってくると、前の席の椅子を引きそのまま座る。
背もたれに手を乗せその上に顎を乗せたその顔は…少し怒っているようだった。
「天ヶ瀬くん…?」
「あの日、何でひとりで帰ったの」
なんて答えよう。
天ヶ瀬くんから聞かれるであろう問いかけには、何も答えを用意していなかった。
素直に答える訳にはいかないし…。