すべての愛を君だけに。

ピッ
車の施錠解除の音が鳴る。


職員駐車場にはもうあまり車は停まっていなかった。


「1人、前な」そう言って運転席側のドアを開ける。






「雨が前ね」


「え!?」


「叔父と姪だから気まずいとか無いでしょ、わたし達が前なのはちょっと」






雨の背中を押して助手席側に回らせ、湯川と天ヶ瀬は後部座席のドアをそれぞれ開けた。


両手にカバンを持ったままじっと助手席を見つめるだけの雨に、運転席から手を伸ばし助手席のドアを開ける。


雨と目が合う。


ここまで来たのに社会科準備室の時のように小さな抵抗をしている。






「比嘉」


「……」


「乗って」


「…っ」


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