すべての愛を君だけに。
掴んだ手は、とても細く感じた。
振り向いた雨とやっと、目が合う。
切り揃えられた前髪、くっきり二重の大きな目はお義姉さん似だと思う。
顎のラインまでのボブヘアーで右側だけ髪の毛を耳にかけている。
「離してください…っ」
「いやだ」
「離してっ」
「なんで俺のこと避けんの」
今にも泣き出しそうな顔で俺を睨む。
あー…
マジで何やってるんだろ。
こんな顔させて、何がしたいんだろ。
「避けてなんか…!」
「なんで敬語なの、望月先生なんて呼んだことないくせに」
「あゆ、みちゃ…っ」
「俺のこと好きだって言ったくせに、天ヶ瀬のことは名前で呼ぶんだ」