すべての愛を君だけに。
今度は歩ちゃんの手が腰に回され、体が熱くなる。
見上げて歩ちゃんの顔を見る。
すごい顔が近い…でも久しぶりに歩ちゃんの顔しっかり見たかもしれない。
やっぱりかっこいい…。
「汚ねー手で触んな」
「…チッ」
聞いたことないくらい怖い声で歩ちゃんが言うと3人組の男の人たちは舌打ちして走ってどこかへ行ってしまった。
歩ちゃんが視線を落としてわたしと目を合わせる。
…やばいっ、距離が近すぎる…!!
わたしは歩ちゃんの胸を押して距離をとる。
「…あり、がとうございます…」
「おう、気をつけてな」
それだけ言って、歩ちゃんは階段を登って行った。
触れられたところが熱い。
心臓は痛いくらい早く鼓動を打っている。
歩ちゃんが見えなくなるまでその背中を見送った。