すべての愛を君だけに。
その人が振り返る。
「雨…!?」
名前の通り、振り返ったのは慶くん。
白いシャツに白いベスト、黒のリボンタイを結んだ紺色スーツ姿がとても似合っていてどこかの王子様みたい。
驚いたようなその表情でさえ、漫画のヒロインが密かに想いを募らせている男の子みたい。
「ねーねー、お兄さん!わたしミルクティーも!」
「え...はい、かしこまりました」
慶くんは手に持った伝票に注文を書いていく。
…なんか耳赤い?
席に案内されたなーちゃんとわたしはメニューを広げて何頼むか考える。
「雨、慶に何するか教えてもらってなかったでしょ」
「うん」
「あの格好、恥ずかしいからって雨に見られたくなかったらかららしいよー」