すべての愛を君だけに。
なんか…じっと見つめられてる…。
わたしの顔になにかついてるかな…。
掴まれていない方の手で頬に触ってみる。
「何かついてますか?」
「え?」
「じっと見てるから」
「いや…」
「あれ、慶じゃん」
その声で慶と呼ばれた彼とわたしが同じ方向を見る。
「なーちゃん!」
「那奈」
声が重なる。
わたしが彼の方を見ると、彼も同時にわたしの方を見ていた。
「…ぷっ、動きハモリすぎ」
なーちゃんが笑う。
それを見て…何だかわたしもおかしくて笑ってしまった。
慶、と呼ばれたその人も首の後ろに手を当てて少し俯きながら笑っていた。