すべての愛を君だけに。
もう触れてしまいそうなほど近い。
目を閉じる雨にさらに近づく。
唇が重なる……直前。
─────……♬~♬~
俺のスマホからの着信音。
無視して続けようとする俺の胸を雨が押す。
「何」
「何じゃなくて!…電話鳴ってるから」
「今それどころじゃない」
「出るの!!」
はあ…とため息をついてソファーから降りてポケットからスマホを出す。
画面には“沙織”の文字。
雨から少し距離を取ろうと雨から眼鏡を受け取り掛けながら立ち上がる。
キッチンの方へ向かってから電話に出た。
「もしもし」
『…歩?今、家?』
「…ああ」
嘘だけど本当のことは言えず、そうだと返事をした。
返事をしたところでまだ鍵を返してもらってないことに気づく。
また家に行かれてたらこれも嘘だとバレるけど、その時はその時で外で飲んでたとか適当に言おう。