すべての愛を君だけに。

「失礼しまーす…沙織先…せ、い」






保健室の中は独特の消毒の匂いがした。


部屋が温かいせいか特に強く感じられた。


部屋の真ん中に人がいるのが目に飛び込んでくる。


ああ、他に治療しに来た生徒でもいたのかな。


そう、思った。
でも違った。





歩ちゃんが居た。


…沙織先生と、キスをしている歩ちゃんがそこに居た。





何が起こってるんだろ…。


周りの音が全て消えて何も聞こえない。






「……雨ちゃん」






そう呼ばれて我に返る。


…タイミング、悪すぎる。


沙織先生の声にわたしの方を見た歩ちゃんと目が合う。


ここに居ちゃいけない。
逃げなきゃ。


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