すべての愛を君だけに。
ゆっくりと離れる時、寂しいと思った。
だけどそれよりここから逃げたい。
わたしの頬を包んでいた歩ちゃんの手が少し緩んだ時、歩ちゃんから距離をとる。
「…大嫌い!」
歩ちゃんなんて嫌い。
すぐ嫌いって言うなんて、やっぱりまだ子供なんだな。
だからすぐ歩ちゃんに子ども扱いされちゃうんだろうな。
歩ちゃんに背を向けて走り出す。
後ろからはもうわたしを呼ぶ声も追いかけてくる足音も聞こえなかった。
…膝が痛い。
怪我したの、忘れてた。
だけどもう保健室室には戻れない。
わたしは誰もいない自分の教室に戻って机に突っ伏した。
シャラっと首元で音が鳴った。
歩ちゃんに貰ったネックレスを握る。
移動教室から戻ってきたなーちゃんに声をかけられるまで、わたしはいつの間にか眠ってしまった。