すべての愛を君だけに。

そう言おうとしたのに…。


歩ちゃんに名前を叫ばれて言えなかった。


微笑んでた。
歩ちゃんはずっとわたしの方を見て微笑んでた。


何も言うな、そう言っているように。


なんで…っ。


言わせてよ、言わないと会えなくなっちゃうのに。


なんで笑ってるの…!






「雨、行きましょう」


「…いやだっ、ここに居る!歩ちゃんと…っ」






お母さんに腕を掴まれて部屋の外へと引かれる。


振りほどこうとすると頬に強い痛みが走った。


一瞬…何が起こったのか…わからなかった、けど。


目の前にいるお母さんが大粒の涙を流していること、手を振りあげているところを見て叩かれたんだってわかった。


< 335 / 393 >

この作品をシェア

pagetop