すべての愛を君だけに。

いつの間にこんなに好きになっていたんだろう。


会いたい。
雨…今すぐ会いに行けたらどんなにいいか。


沙織に返事をする元気もなくコートを脱いで風呂の方へ歩き出す俺の手を握る。






「歩」


「触らないでくれ」


「怒ってる?」






振り返ると上目遣いに俺を見つめていた。


俺が悪いんだ。
自分の雨への気持ちを抑えられなかった俺が。


怒っていないといえば嘘になる。
だけど…もう怒ったって仕方がない。


もう…何をしたって無意味だ。






「どうしてわたしじゃだめなの…あの子は姪でしょ!?わたしが傍に居るから、ね」


「…………ごめん」






繋がれた手をゆっくり反対の手で剥がし背を向ける。


脱衣所の扉を閉めその場に座り込んだ。
両手で顔を覆う。


こんなに自分の中で雨の存在が大きいこと。


毎日、雨が居たから頑張れてたんだってこと。


今さら気づいたって遅いのに。


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