すべての愛を君だけに。

そう言われて、幻覚じゃないって思えた。






「歩ちゃん!」






歩ちゃんも突然の雨にびしょ濡れで雨宿りしに来たって感じだった。


そうだ!
夏休みに連絡するって言ってまだ来てないこと言わなくちゃ。






「…と、天ヶ瀬じゃん」


「歩先生、こんなところで会うなんて」


「なんだー?デートかー?」






デート?
…これデートだなんだっけ。


わたしはただ天ヶ瀬くんと遊びに来てるだけで、
デートだなんてお互い思ってないよ。






「違…」
「あれ、雨ちゃんと天ヶ瀬くん?」






わたしの言葉をかき消す、透き通った声。


その声の持ち主は歩ちゃんの影からひょこっと顔を出す。
胸元まである黒髪は濡れている。


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